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【コラム:クリエイティブ】Webでのクリエイティブは“仕掛け”に負けるのか?

[07年06月18日]

男子は狙うもの トイレに「的」広告(ITmedia News)

広告と人が出会う形は山ほどあるが、これは最も単純で、最も効果的な形の一つではないだろうか。
広告が「効く」時とは、結局のところユーザーが『欲しい』と思った瞬間である。

当たり前に聞こえるだろうが、ある商品の利点が最も深く刺さるのは、その利点が欲されている“状況”が生む。

部屋でTVを見ていたら、虫が飛んできた。
手で叩くのはイヤだし、怖い。

とはいえ、代わりになる雑誌や新聞も見当たらない。
そんな時、窓の外を殺虫剤が通りかかれば、誰だって声をかけたくなるだろう。

ユーザーは、いつ・どこで・どんな風に商品の利点を、実感を伴って「認識」するのか。
そこからスタートするクリエイティブ、ないしマーケティングは、インプレッションやリーチという観点から創られるものよりはるかに強くなる。

取り上げた広告は、実際の商品の利用場面で訴求しているわけではない。
が、ユーザーの状況の捉え方は上手い。

男・的・トイレの三拍子が揃えば、そこには「命中」以外なにもないだろう。
「命中」から商品への流れは無理のないものである。

状況から始まるクリエイティブは、量で圧倒するだけの下手なクリエイティブより強いのである。

今回、この話を取り上げたことには、もう一つ理由がある。

ユーザー発想のクリエイティブ/マーケティングとは、突き詰めれば「インタラクティブ」の本質に行き当たる。
インタラクティブは双方向性を指すが、ユーザー参加型○○がその全てではない。

本質としてはユーザーが求める刺激を、求めるタイミングで、提供することで、インタラクティブは成立する。
アクションにアクションで応えるインタラクティブがあるなら、インサイトをフォローするインタラクティブもあるはずだ。

とりわけWebはメディアの特性として、そんなインタラクティブの可能性を内包している。
実際、ユーザーの行動履歴に合わせて広告を配信するシステムは、Web広告の本流となっている。

しかし、Webのクリエイティブは、そろそろそこに潜む問題点と向き合う必要があると感じる。
というのも、Webはこれまでのメディアにはなかった「インタラクティブ性」を内包しているが故に、その仕掛けとしての機能ばかりがもてはやされている気がするからだ。

「Webってこんなことができる!」というのは、例えばGoogleやAppleのワクワクするような試みを可能にするが、同時に「できるからやりました」という無意味な試みも数多く生んでいる。

例えば、Cookieを利用したターゲティング広告は、Webだからこそ可能な広告であり、ユーザーとの接触点も理想的なものである。
あるサイトにおいて、欲しいもの・買ったものに付随して必要となるものが自然な流れの中で提示されることは、ユーザーにとっても企業にとってもハッピーなことだ。

しかし、一度の検索や購買によってカテゴライズされたが最後、ずっとその手の広告に追われるようなやり方はユーザーにとっては迷惑に他ならない。
それでは、企業にとっても逆ブランディングになってしまう。

「できること」に乗っかるだけの広告には、クリエイティブの基本、マーケティングの基本がすっかり抜けている。
ユーザーとの接点においてどうか?が大事なわけで、“こちら側”にとって分かりやすいセグメンテーション、ターゲティングの実行は、もはや通用しない。

広告が、その名の通り「広告」であった時代ならまだいいとしても、Webが登場した今ではナンセンスに過ぎるのだ。

仕掛けはあくまで道具である。使い方を決めるのは、人の知性であり、想像力である。
テクノロジーの進歩は、どんどんと制約をなくしていく一方で、クリエイティブの羅針盤を狂わせている。

限られた条件の中で勝負することは、クリエイティブの面白さのひとつであるが、これから求められるのは制約が取り払われた状況でもぶれないクリエイティブを生み出す力だ。

仕掛けが変わっても、人は変わらない。人が変わらない限り、クリエイティブの本質が変わることもないし、つまりはマーケティングのあり方も、企業経営そのものも変わることはない。

ただ、目まぐるしく進歩する仕掛けの巧妙さに、自分達が飲み込まれてしまうのを避ける強さが必要になってきている。
本質を見失わないことは、それだけ難しいことなのだ。

ユーザーにとって、広告が広告であり続ける必要はない。
有意な情報であれば、それでいいのである。

そこを外さないクリエイティブは、きっと“仕掛け”よりも強く光るだろう。


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